めるぱんブログ

とある医大生の勉強の記録です

オンライン臨床実習

今週の金曜までの2週間、民谷先生主催のオンライン臨床実習に参加していたのでその内容とそこで勉強したことの覚書をしておきます。

 

1日目

プレテストとオリエンテーション

テストの内容は主に肺炎について

今後の実習も肺炎についてメインにやる予定

 

2日目

 

カルテを書く際は根拠を重視

呼吸数、SpO2、FiO2が肺炎では重要な指標 

 

課題

アンピシリン-スルバクタムとは

アンピシリンはペニシリン系の抗菌薬であり、スルバクタムはβラクタマーゼ阻害薬である

腎臓で代謝され、時間依存性の薬剤である。一方で同じような薬剤特性をもつセフトリアキソンは肝臓で代謝される。

 

アンピシリンスルバクタムの抗菌スペクトラムは一般的なグラム陽性球菌とグラム陰性桿菌をカバーしており、また、黄色ブドウ球菌はペニシリナーゼという酵素を産生するため、アンピシリン単剤では無効だが、スルバクタムの合剤にすることでMSSAに対しても有効になる。また嫌気性菌も抑えられるようになっているため誤嚥性肺炎に対しても有効である。

一方院内感染で多いSPACE(セラチア、緑膿菌アシネトバクター、シトロバクター、エンテロバクター)はカバーしておらず、またMRSAに対しても無効である。

今回はインフルエンザ感染症後の肺炎ということで、起炎菌としては一般の市中肺炎で上位となる肺炎球菌とインフルエンザ桿菌以外に黄色ブドウ球菌も考えられるのでこの処方になったと考えられる。

 

 

酢酸リンゲルとは

生理食塩水に電解質と酢酸を加えたものが酢酸リンゲルである。

その特性は生理食塩水と同じで細胞外液補充液であるため、血管内にとどまる力が強いので血圧を保ちたいときに使用する。

生理食塩水と比較し、Clの濃度が抑えてあるため高Cl血症になりにくく、維持液と比較しても低Na血症や自由水補充が少ないため血管内脱水において有効である。

 

3日目

盗汗は肺炎球菌性肺炎に特徴的な症状

 COPDではSpO2 97%を超えないようにサチュレーションは88

呼吸数は30秒計測して2倍

肺炎は肺実質の急性の感染性の炎症

医療介護関連肺炎NHCAP

1.長期療養型病床群もしくは介護施設に入所している
2.90 日以内に病院を退院した
3.介護を必要とする高齢者,身障者
4.通院にて継続的に血管内治療(透析,抗菌薬,化学療法,免疫抑制薬等による治療)を受けている

院内肺炎HACP

入院48時間以上経過した患者に新たに出現した肺炎

市中肺炎CAP

病院外で日常生活をしている人に発症する肺炎(NHCAP,HACPを除く)

グラム染色が最も早く反応し菌が減少

 

課題

治療の効果判定指標

肺炎に限らずすべての疾患はパラメータを設定し経過をフォローすることが重要

その際一つのパラメータのみで判断しない

臓器特異的パラメータを特に重要視

呼吸苦、咳嗽の頻度、痰の量性状

呼吸数、SpO2、酸素需要量(FiO2)、呼吸音、努力性呼吸数の有無

胸部X線、喀痰グラム染色

 

抗菌薬投与中止のタイミング

経過良好であれば抗菌薬は5から7日間で終了できる

3から7日間の投与期間と10日間の投与期間を比較したメタアナリシスでは治療失敗・死亡リスク有意差なし

非重症例は5日間、重症例は7日間を目安としてよい

 

下記の4項目のうち3項目以上満たした4日後

1.解熱(37.0度以下)
2.白血球増加の改善(正常化)
3.CRPの改善(最高値の30%以下への低下)
4.胸部X線陰影の明らかな改善

 

4日目

情報→解釈→介入 のサイクルを意識して診察

問診でも治療のパラメータを意識して聞く(咳痰睡眠食欲など)

採血結果などは前回の結果と比較して書く

SOAPを意識的に区別して書く

レントゲンは遅れて出てくるので改善の指標としては微妙 

新聞本を読めるというのは元気になってきているという証拠

アセスメントは患者情報と知識知見の二本の柱に支えられている

 

課題

翌日の輸液オーダー(種類・量)

減らす

抗菌薬は7日間

バイスを減らせないか

モニターはオフ

酸素はスケールそのまま

血糖測定は終了

 

5日目

咳や喀痰の量はS情報

Aでは最初に診断名を書いておく

患者の周りにあるものは話題に挙げることで生活状況がわかる

退院後のことを考えると生活背景は非常に重要

抗生剤はオーラルスイッチも考えておく

ディエスカレーションは短い期間(1週間程度)であればそこまで気にしなくてもよいかも

ペニシリンGはカリウムが付加される、作るのがめんどくさいというデメリットもある

 

課題

安静度の支持変更(シャワー浴)

酸素を外して呼吸苦がなければルートキープしたままラインをロックするのでシャワーはオーケー

 

帰宅後の生活を想像する

入院初期は病気をメインに、後期は生活のことをメインに考える

生活についてはしっかりとコメディカルと連携していく

 

土日への引継ぎをSBAR形式で

自分以外の人に申し送りするときに使える書式

 

Situation 状況

発熱呼吸苦で3月1日受診

治療が奏功し症状安定

 

Background 背景

インフルエンザ感染後

既往歴なし ADL自立・自宅暮らし

 

Assesment 評価

#1 インフルエンザ感染症後の細菌性肺炎

(入院時喀痰培養で肺炎球菌検出)

 

Recommendation 推奨 

アンピシリンスルバクタムを投与中

土日はイベント対応でお願いします。

 

6日目

課題

肺炎球菌ワクチン

肺炎球菌は莢膜の種類から90種類以上に分類

成人に使用できるのは23価(カバー広いがB細胞依存、公費負担)と13価(カバー狭いがB細胞とT細胞どちらも活性化)

 

 

喀痰培養結果

抗菌薬がeffectiveなのに喀痰培養する意味はなし

MRSAは定着(たまたまいただけ)

1臓器1起炎菌

不要な検査は追加しない

複数のパラメータで評価

 

7日目

課題

病状説明/ICでの留意点

ゴールは相手の納得ということを明確にしておく

伝えたでは不十分で伝わったことが大切

説明内容だけでなく相手の理解度を確認

 説明後に自分以外の誰か(看護師など)に確認してもらう

 顔を見て話す=見ないと相手の表情がみられない、信頼してもらえない 

必要十分の内容分量で話すダラダラしない

 

記録を残す

 説明内容や質問について

 

まず相手の知っている情報(入院までの経過)から話すことでワンクッション挟む

 

抽象と具体のバランスを重要性

具体的すぎると専門性が非常に高くなるので患者にわかるようにかみ砕いて伝える。医療者に対してはしっかり具体的に話す。

言葉の定義を共有する=miscommunicationを予防

 

医学知識は常に更新して情報の取捨選択を行う

ノンテクニカルスキルも重要

 

8日目

課題

退院時サマリの留意点

ちゃんと書けば診療報酬に加算が入る

患者の入院情報を共有できる=患者の診療ケアを連携・継続できる

  

退院時サマリの型

主訴

現病歴 既往歴 内服歴

社会生活歴

身体所見

検査所見

診断 プロブレムリスト

アセスメント プラン

入院後経過

考察

 

主張→根拠→結論の3ステップ

最初に結論を言っておくとよい

 

次に診療する医師に引き継げるような内容を網羅しているか

入院時の情報、入院後経過が簡潔にまとめられているか

病因機能的に必須事項、期限を守っているか

自己研鑽として考察が充実しているか

 

退院時サマリはすぐ書く

診察能力は考察に反映される

資産として累積される

 

9日目、10日目

今までの実習の振り返りがメイン

実習前のプレテストと同じようなテスト

 

まとめ

感想としてはオンラインの実習であるため、実際の患者もおらず、身体診察も取れないのですが、今までのポリクリより勉強になった実習でした。

毎朝患者情報をみてそれに対するカルテを書くのですが、その際に必ずクリニカルクエスチョンを一つ出すということが義務付けられており、その内容について全国の学生たちとディスカッションをします。まずこれだけでも非常に得難い経験ですが、このクリニカルクエスチョンに対して調べたり話し合ったりしているうちに、自分も医療に参加しているような気持ちになれました。

自分は非常に言葉にするのが下手なのですが、とにかくこのオンライン臨床実習は非常に勉強になりました。

コロナウイルスで忙しい中準備をしてくださった民谷先生とチューターの先生方、誠にありがとうございました。